• 2014.4.12
  • コメントは受け付けていません。

左官職人の歴史

左官と漆喰

左官って何をする人なの??

左官はひと言でいうと『壁を塗る職人』のことを指します。
ヨーロッパでは左官職人の地位はとても高いですが
日本では左官職人の数が減少の一途をたどっています。

左官の古名には、土工(つちのたくみ)、白壁師、壁大工、石灰工などがあります。
白壁師や石灰工と呼ばれていたことからも
むかしの左官職人と漆喰には切っても切れない縁があったのでしょう。

16世紀の段階ではまだ左官という言葉はありませんでしたが
江戸初期頃から左官という言葉が使われだしました。

当時は、宮廷を工事する際に役職がないと
宮域内に入ることができなかったので
仮の官位として
「守(かみ)、介(すけ)、掾(じょう)、目(さかん)」
の階級がなぞられました。

左官という名前の由来はここからきているといわれています。

ちなみに、
職名の中で“官”が付くのは左官だけです。
家の壁を仕上げていく左官屋さんは
庶民の間で尊敬されていたのでしょう。

左官があるなら「右官」もあるのではないかと思うかもしれませんが
その存在は現在のところ明らかになっていません。

左官と漆喰

西京壁と江戸漆喰

みなさんは
『西京壁と江戸漆喰』という言葉をご存知でしょうか。

その名前の通りなのですが
関西は京壁、関東は漆喰壁が住民の間で広まっていたようです。

関西では良質な粘土性の壁土が多くとれるため、
京壁、聚楽(じゅらく)壁が発達しました。

関東は地表がローム火山灰層で覆われているので、
土壁に使えるような粘土が取れませんでした。
そのため、地域ごとに生産される石灰を使い、
中塗りや外塗りを漆喰仕上げにする技術が発達したのです。

関東では聚楽壁(じゅらくかべ)より漆喰のニーズの方が高いと思っていたのは
偶然ではなかったようです。

左官職人さんが描くアート

お時間あれば、
『鏝絵(こてえ)』とグーグルで画像検索してみて下さい。

鮮やかな鏝絵がたくさん出てきます。
これらはすべて左官職人の腕によって造られたものです。

左官職人は塗壁工であるとともに、芸術家の一面も持っています。
これらは室内のアトリエで制作されたのではありません。
足場が不安定な二階建ての建物にも描かれています。

これは普通の絵描きさんには無理な作業です。

絵描きは自分の絵が完成したとき自分のサインを入れますが
この鏝絵は左官職人にとっての署名、サインでした。

鏝絵の出来が素晴らしいと、
その家に住んでいる人も誇らしくなったといいます。

それに加えなんと、
この鏝絵は呪術・魔除けの意味合いも入っていたことから
左官は陰陽師(おんみょうじ)的な役割も
果たしていたのではないかといわれているのです。

なんだかロマンですね。

漆喰の鏝絵11

漆喰の鏝絵12

漆喰の鏝絵13

漆喰の鏝絵14

漆喰の美しい鏝絵

余談・漆喰を追いやったポルトランドセメント

鎖国が緩んできた幕末期に
『ポルトランドセメント』というものが
日本に入ってきました。

いわゆるセメントです。

第一の建築材料は『土・砂』
第二は『石灰』といわれますが

第三の『セメント』は当時の建築業界にとって
ものすごく革新的なものでした。

・作業性が優れている
・水を入れて練ると岩石のような硬さになる
・水や火に強い

このような特徴を持つセメントは
日本の建設業界に瞬く間に広まっていきました。

第二次世界大戦後の日本は
荒廃した日本の街の復興を
とにかく早急に行う必要があったので
建築作業の効率化、省力化が求められたのです。

自然乾燥を待たなければならない
職人によって出来が異なるような
土壁や漆喰はこの時に淘汰されてしまいました。

工期の短縮だけに重きをおかれた結果
ヨーロッパの歴史ある古い町並みとは異なり、
日本の町並みは地域の特色が見られない
同じようなデザインの建物ばかりになってしまいました。

とても残念なことです。

現代の日本には
技を盗んだり手本にできるような
建築物や工事があまりありません。

漆喰、しっくいと言われても
なんのことかわからないという方も
大勢いいらっしゃるでしょう。

今では漆喰を塗れない、
塗った事がない左官職人が増えているそうです。

しかし、
近年のエコブームや健康志向によって
『漆喰』が再度注目されるようになりました。

エコや健康志向だけでなく
漆喰に求められている要素の1つに

自然素材に囲まれた心のやすらぎ

というものもあります。
漆喰は今ではストレス対策壁としても注目を集めているのです。

近年の建築材料、建築方法を使った住宅はそのままに
壁や天井だけでも自然素材による工法に戻すことができれば
生活は一変します。

洋室の壁天井を漆喰に変えるだけでも
シックハウス対策ができますし
精神的やすらぎを得ることができるのです。

おそらく漆喰は、
今後の日本の住宅にかかせないもの、
スタンダードなものになるでしょう。

歴史は繰り返す、なんて言いますが
漆喰の歴史も繰り返すのではないかと考えています。

現在、左官職人といえば、
クロスの張替えをする人というイメージがあるかもしれませんが
これからは
左官職人=漆喰塗壁をしれくれる人
というイメージに変わるのではないでしょうか。

関連記事

コメントは利用できません。

おすすめ記事

ページ上部へ戻る